
ストラットフォードで開幕・英国での反響
Othello公演はプレビュー(試演)を経て、2004年2月16日、ストラットフォードのスワン座で開幕しました。2月18日のプレスナイト(報道機関向けの公演)の後、各紙に次々と劇評が発表されています。
絶賛の地方紙
ストラットフォードの位置するイングランド中部の地方紙(オックスフォード・タイムズ、バーミンガム・ポスト、オックスフォード・メールなど)は、こぞってこのプロダクションを絶賛。
背筋を凍らせる名優シャーの演技
シャーの魅力が舞台を席巻
アントニー・シャーとセロー・マーク・カ・ヌクーベ 最高の組合せ
大成功を収めた強烈な悲劇
といった見出しが躍っています。演出家のグレゴリー・ドーランにも賛辞が送られており、オックスフォード・タイムズの記事は、次のように締めくくられています。
「私の席の後ろで、誰かがこうつぶやいた。『シェイクスピアは、グレゴリー・ドーランに会うことができたらどんなにかうれしいだろうに』私も同感だ。」
手厳しい全国紙
全国紙(インディペンデント、ガーディアン、テレグラフ、タイムズ、デイリー・メール)の劇評は、地方紙に比べるとやや手厳しいものとなっています。もちろん標準以上の評価はしているのですが、さすがに英国高級紙の看板批評家たち、簡単には絶賛してくれません。しかし劇評をよく読んでみると、気鋭の演出家ドーランや名優シャーに対する期待が大きいからこそ、批評も厳しいようです。
たとえばインディペンデント紙のローダ・コーニングは、ドーランをストラットフォードの過去の帝王とよばれる名演出家トレバー・ナンと比較しています。
「ドーランは、ナンと同様の才能を持っている。舞台を隅々まで生かし、そこで演じる俳優一人ひとりに息吹を吹き込み、脚本の意味に迫っていく・・・・・・これを念頭において、今回の公演をナンの1989年版と比較してみるのは興味深い(このような比較はフェアでないかもしれないが、その誘惑には抗しがたい)。・・・・・・その結果、先輩のものと比較すると、今回のプロダクションの弱点が明らかになってくる。」
この劇評のタイトルは
ドーラン RSCの帝王を退けることはできず
過去の名演出家を超えることを期待されるRSCの演出家とは、なんと厳しい仕事でしょう。しかしそのような期待があるからこそ、素晴らしいプロダクションが生まれるのでしょう。
テレグラフ紙のチャールズ・スペンサーの劇評は、タイトルが
不完全燃焼のイアーゴ
「トレバー・ナンやサム・メンデスのプロダクションと比較すると、今回のものは、燃え立つべきところでしばしばくすぶってしまう。・・・・・・二人の主役の演技も、最終的には期待を裏切るものであった。」
と、かなり手厳しいものとなっています。しかし彼は劇評をこんな風に締めくくっています。
「このプロダクションは間違いなく、聡明で洞察力にあふれたものである。それなのに、こんな煮え切らない評価をするなんて、自分でもなんと意地悪なんだろうと思う。しかしOthelloを見た後は、心の底から揺さぶられるような激しい感動があるべきだ。今回の感動はそれに一歩及ばなかった。」

この劇評は、開幕直後の2004年2月20日付となっています。オセロ役のセロー・マーク・カ・ヌクーベ、デスデモーナ役のリサ・ディロンは、この作品がRSCへのデビュー作です。二人にはシャーのように豊富なシェイクスピア劇の経験がないことを考えると、公演の回を追うごとに舞台が熱を帯びていくだろうことは当然のように思われます。私はそれから約1ヵ月後の3月22日の公演を観劇しました。緊張感は途切れることなく、胸を締め付けられるような感動を覚えました。日本公演はどうか、皆さんの目で確かめてみてください。
最後に、サンデー・タイムズのジョン・ピーターの劇評をご紹介します。
「グレゴリー・ドーランは、我々の時代屈指のシェイクスピア演出家であるという評価を高めつつあるが、この作品により、それをより確かなものとしている・・・・・・アントニー・シャーは、フランク・フィンライ、イアン・マッケランと並ぶ最高のイアーゴである。・・・・・・Othello公演は日本のカンパニーの協力を得ており、春に日本ツアーを行う予定。現在のところロンドン公演の予定は発表されていないが、関係者には今一度検討願いたいものである。」
写真:上ーオセロ公演のポスター 下ーオセロの上演されているスワン座の入り口