キャサリンちゃんの日本語レッスン手控え

プロフィール 日本語を教えているPhさんのお嬢さん。高校受験を終えて、夏休みに、約1ヶ月日本に滞在する。その間に日本語を習得しようというもの。ラテン語、ドイツ語で受験しているが、日本語学習はゼロ。
4週間でひらかな、カタカナをマスターさせ、簡単な文型を教える。
テキスト JAPANESE FOR BUSY PEOPLE  KANA WORKBOOK  講談社 2006
月日 時間 内容 テキスト
第一週

2008年7月7日
16:00−
17:30
セガフレードで待っていると、お父さんのPhさんがまるで荷物でも届けるように、キャサリンちゃんを置いて、姿を消した。そのさわやかな事に驚いた。日本の親なら、しばらくいて、一応レッスンが始められる状態になるのを見届けて去るのが普通だが・・・レッスンの計画を作ることから始める。週日は毎日やりたいと。気立ての良い、聡明な子であった。15歳?中学を卒業、この秋、2年間のコレッジに進学する。来日4度目、今回は1ヶ月、これまででもっとも長い滞在だと。化学、歴史、ラテン、数学を勉強し、大学では生化学をやりたいと。イギリスの教育制度について聞くと、次のように書いて教えてくれた。
nursary 1-3 infant school 4-7 primary 7-10/11 secondary 11-15/16 sixth form (college)16-18 university 18-
そして、日本の制度について質問するので教える。日本語習得の目的は日本での生活が楽しく、日本人との会話が出来るようになりたいということだった。
50音表のローマ字で発音を勉強、続いて「ひらかな」の読みに入る。8割がた読めるようになった時点で、書く練習「あ」から「ほ」。宿題は同範囲を5字づつ書いてくること。順調な滑り出しであった。ほめれば、その都度、Thank you! と返ってくるのでおかしかった。小さなレイディーという感じ。
〜p19
7月8日 14:30−16:00 ひらかな、「ま」以降の書き方、読み、拗音、長音、促音、簡単な挨拶、(これは読みの練習をかねて)お父さんのフィリップさんの要請を受けて、留め、払いなど細かく教える。読みは8割。あと一日で全部覚えると思う。本の話、ミステリーが好きだと。オスカーワイルドが面白い。私が「不思議の国のアリス」が好きなことはお父さんから聞いているようだ。数字は10まで言えるので20まで教える。 〜p34
7月9日 10:00−11;30 宿題をしっかりしてくる。書き方にはかなりの素質が感じられる。ひらかなの読み。9割、め、ほ、へ、て、が直ぐ出ない。順調に進む。曜日。数え方は最初に色々出てくるのでかわいそう。一個、一つ、一本、一分・・・1時間後に有栖川公園から図書館へ向かう。池の釣り人に驚く。リージェント・パークなら逮捕されるだろうと。一部稼動中の図書館を案内する。 〜p35
7月10日 14:30−16:00 宿題OK.ローマ字からひらかなへの変換をやらせる。9割近い出来。後一歩。文法事項に入る。〜は〜です。そのバリエーション。理解が大変早く「こそあど」もすんなり入った。予習してきているのかもしれない。1時間半集中し過ぎて共に草臥れる。
〜P40
7月11日 14:30−16:00 恵比寿の改札口で待ち合わせ、下のTully'sで。昨日渡したマーザーグースのアンケ-トを書いて持ってきてくれた。読みの復習。まだ読めない字が出る。わ、ま、も、め、ぬ、れ、など。文法、〜ではありません。〜の〜。紹介と挨拶。ここまで入れて、GOOD DAY BOOKSへ連れていき、店主とその主人に紹介して、置いて帰る。 〜P43
第二週
7月14日 10:00−11;30 恵比寿の改札口で定刻に現れる。下の喫茶店で、彼女はお腹が痛いので飲み物は何も頼まず。ジブリのアニメよく見ている。レッスン1から3までの復習。書けない字が少しある。わ、めなど、文法の飲み込みは早やく、不思議なほど。語彙をすこしずつ増やす。 〜P43
7月15日 14:30−16:00 レッスン4へ。時間の表現,9時から11時まで。など、日にち、数の数え方、いち、にい、さん・・・ひとつ、ふたつ、みっつ・・・ついたち、ふつか、みっか・・・・Oh!No!とキャサリンちゃんは叫ぶ。一課すますのがやっと。これに一本、一個、一冊・・・入ると大変で、これが比較的早い時に出てくるので学習者はたまらない。 〜p45
7月16日 10:30−14;00 いつも違った靴を履いてくるので、ロンドンから何足の靴を持ってきたのかと聞くと5足と言う。やはり、小なりといえども淑女なのだ。いつもの喫茶店でレッスン。今日はレッスン4の復習とレスン5の〜をください。昼、近くのすし屋でランチ。彼女はベジタリアンであるが魚はOK.寿司に目がない。醤油を小皿に注いでくれる。ロンドンでは刺身が3切れで1000円、しかもシェフは中国人という。よく食べた。ランチタイムだから安いもの。午後、新宿へ、世界堂を案内して、副都心線で渋谷へ帰る。案内する方の私は結構草臥れる。最大の原因は私が英語を使い慣れていないということ。彼女は母国語となれば実に堂々たる英語を使う。こちらは負けてしまう。 〜p45
7月18日 14:30−16:00 一日置いてのレッスン。まず、寿司を作ってカードに書くことから始める。とろ、ひらめ、えび・・・・とひらかなで書き、横に絵を描いて貰う。出来たところで、私がそれを預かり、彼女に、これを注文してもらう。〜をくださいの練習。1個、2個・・・ひとつ、ふたつ・・・両方教える。ひらめ、6個ください。とろ、5個ください。というので、普通は1個か2個を注文するものだと教える。復習をして、次のレッスン、〜へ/に いきます。(ました)へ移る。語彙表の作り方を教える。来週前半は、沖縄旅行、次回は金曜。 〜p48
第三週
7月25日 10:00ー11;30 3日間の沖縄旅行から元気に帰ってきた。沖縄では良いベジタリアン料理には恵まれなかったようだ。語彙のカードを作ってきていたので、それに復習ををする。あす・あしたで、Tomorrow is another day.の話をしたら彼女は乗ってきた。「風と共に去りぬ」は彼女の愛読書、続編「スカーレット」も読んでいる。メラニーが好きだと。最近ロンドンで「風と共に去りぬ」のミュージカルがかかっているが余りよくない。こんな会話を15才の少女とできるとは。教科書は、前課の復習を済ませて、レッスン6、〜へ/に〜ます。(ました)へ。週末結婚式で出るというので、いろんな語彙を入れる。花嫁、花婿、花火。こんな所に花が出てくるのに彼女は感激。言語センスのある子かもしれない。宿題は書き取りと語彙カード作成。 〜p49
7月29日 14:00
ー15;30
語彙カードを作ってきたので一緒に復習する。過去形へ。変化のところを赤黒のボールペンで書き分けてメモするし、必要な語彙をどんどんカードに書くし、世話のかからない優良生徒。過去形でドイツ語の過去形が難しいということから、私がgeben-gab-gegebenなど活用を言ったら、目を丸くして喜んだ。隣でTOEICの勉強をしていた若い女性(カナダ、ロンドンは1年滞在の帰国子女)と話をさせる。共通の話題があって話が弾んでいるので、そのまま残して帰る。 〜p53
7月30日 10;00
ー11:30
昨日の女性ジュンコさんに新宿へ案内してもらって楽しかったと。ポケモン・スタンプラリーのパンフレットで、山手線と中央線をたどる。「あ」と「お」、「こ」と「い」で時々混乱が起きるが、今日からカタカナに入る。ひらかなを実に立派に書いたので、カタカナの方も書き方も細かい注意を与えて完璧を期す。推薦図書を書き出すようにお願いしていたら少ししてくれていた。カタカナは明日1日で終えたい。宿題を沢山出した。 〜p62
7月31日 14:00
ー15;30
カタカナ続き。これだけは慣れるしかない。話の過程で自分から語彙を拾って、該当の日本語を教えて欲しいという。ローマ字で書いて欲しいという。まだ、直接耳で捉えることには自信がない。喫茶店、難しい、優しい、とても、たいへん・・・とカードに、表にひらがなを書き、裏に英語を書く。 〜p72
8月1日 10;00
ー11:30
テキストの最後、カタカナ交じりの文を読んで、卒業とする。宮崎駿『もののけ姫』を読む。ゆっくり字をたどらせる。カタカナの擬音、擬態語が山ほど出てくるのでよむ練習には良い。会話は端から訳してあげる。来週は水曜日に帰国。月、火レッスンを受けるという。メールアドレスを教えてくれる。豆腐入りのチーズケーキを作るという。成城石井でケーキ材料を、有隣堂で料理の本の場所を教えて別れる。 〜p77
第4週
8月4日 10:30−12:00 時間を勘違いしたらしく、10時半現れる。事故でなくて何よりだ。侘びを言うこと10遍以上。新しいテキスト『げんき』はスムーズに導入できた。最初の所は前のテキストで学習済みなので当然と言えば当然なのだが・・・カタカナのおさらいとその重要性を教える。このテキストは英語の丁寧な解説があって、ロンドンに帰っても自習できそう。週末、横浜で、学生のピアノコンテストを聞きに行って、自分より年下の子供の演奏に感動したようだ。お父さんの奥さんへのプレゼント内容を教えてくれる。
8月5日 14:00
ー15;30
最終日。カタカナの復習。今日はお父さんと買い物に行くというので、『げんき』の第二課の買い物の所をやる。勘が良いので文法を説明するのが楽。  〜よ。〜ね。も入れる。彼女が推薦する図書のリストをくれた。半分は私も読んでいたが、全く知らないものもあった。同年代の日本の子に比べるとその読書量は凄い。8月7日は彼女の15才の誕生日なので、お祝いの『もののけ姫』を贈る。擬音のカタカナのところをよく読むように言った。彼女からは手製のカードを貰った、表は着物を着た少女、自画像のつもりなのであろう。
裏面に、少しお父さんに教えてもらって書いた文章が、綺麗に書かれてあった。
「みやがきせんせい
ありがとうございました。あなたはすばらしにほんごのせんせいです。
いまはわたしはすこしにほんごがわかるようになりました。
あしたイギリスにかえりますが、にほんごのべんきょうをつづけます。
とくにせんせいのごしんせつなしごとはわすれられません。
くれぐれもおからだをたいせつに。かしこ。
キャサリン」
朝から降ったり止んだりの天気。曇り空のなか、手を振って分かれた。明日はもう彼女はロンドン。
彼女の時計は日本にいる間もロンドンタイムのままだった。すぐにあちらの子に戻ることだろう。
まとめ 一から日本語を教える(相手は習う)という経験だったが、一応満足する形で終わった。生徒も先生も少し草臥れたけれども、達成感はあった。「お」と「あ」の読み間違いは最後まで続いた。彼女がこれから学ばないといけないことが余りにも多いので、彼女がラテン語、ドイツ語のほかに、日本語も学び続けるかどうかわからない。
テキストが少し進んだら、メールで報告してくれることになっているのだが・・・・
英国の少女に接することが出来、また、私の英語の練習にもなった。
凄く出来る子だった。